2013年2月25日月曜日
DEVOID OF GRACE: "Psychotic Journey" (2010)
モダンなデスメタル良いですよねー。
デスメタルの雰囲気を完全に無視してる感じが良いですよねー。
引き継いでるのはテクニカルな部分だけで、重さとかおどろおどろしい雰囲気は脇にほっぽってるのは批判を受ける原因でもあるわけですが、そこが良いからモダンなやつ聴いてるんだよ!
ていうかオールドスクールなデスメタルと違ってプロダクションはマトモで音の分離も良いし、リフも耳を惹く要素てんこ盛りで圧倒的に聴きやすいじゃないか!
…とか思うときもあります。そうでないときもあります。あと、オールドスクールなデスメタル大好きです。
で、このDEVOID OF GRACEはロシアのモダンなデスメタルバンド。
非常にしっかりとしたプロダクションで、ときおりベイエリア・クランチを思わせる勢いを見せるギターリフ、綺麗に歪むグロウル、多彩な展開を支えるテクニカルなドラム、ブェンブェン鳴って存在を主張するベースが走り回る、ってな音を出してます。
いかにも、「MORBID ANGELではなくNILE、DEICIDEではなくDECAPITATED、SUFFOCATIONではなくKRISIUNを聴いて育ちました! でもあそこまでテクニカルなのはやれないのでこうなりました!」な感じ。程よいテクニカルさと程よいエグさ。するりと聴けます。
特に#3"Chaos - New God"はいいですね~。まさにノリノリという言葉がぴったりきます。
ただ、モダンなデスメタルが陥りがちな「優等生の音」になってる感は否めないですね。単純にカッコいいけど、そのカッコよさのワンパターンっぷり故に記憶に残りづらい、という。
"Chaos - New God"も名曲というほど飛び抜けて素晴らしい曲ではないですし。
というわけで、デスメタル好きはまずPVになってる#2"Distorted Perspective"と"Chaos - New God"を聴いて判断してください。それ以外の人はスルー推奨で。
【79点】
2013年2月24日日曜日
DEVOURMENT: "Unleash The Carnivore" (2009)
ブルデスのジャケに出てくる生物とかって、ラスボスとか隠しボス的なポジションありそうだなーとか思ってるんですが皆さんはどうですか?
まあこのジャケの生物は蛆虫がモチーフだそうなのでラスダンの中ボスぐらいかなって感じしますけど。
閑話休題。今年新譜を出す(もう出した?)米国デスメタル界の中堅DEVOURMENTの09年発表の3rdでございます。
99年に1stでスラミング・ブルータル・デスメタルの端を開いたものの02年に解散し、05年に再結成して出した2ndは「音質が良すぎる」だの「やかましい」だの「スネアロールが少ないからクソ」だの散々な言われようだったらしいんですが、ではこの3rdはどうか。
結論から言うとかなりの出来です。というか名盤です。
確かに1stのグッチャリ感というかおどろおどろしさは魅力的なのですが、金物がうっさすぎてリフが聴こえにくいというハンデ付の2ndの方が、曲としてのカッコよさという点では上回ってます。
正直言って"Babykiller"を最初に聴いたときより"Butcher The Weak"を最初に聴いたときの方が「うおおおおおお!」ってなりました。
話しがズレまくってますが、何が言いたいかというと、この3rdは基本的に2ndの延長線上にあり、なおかつ2ndの金物のプロダクションを現代風に改善したようなアルバムだということです。
低音に徹して「グヴィーウヴィヴィヴィーオ゛ヴィー」ってな感じの何言ってるか分からんボーカル、分厚く分かりやすいフレーズ連発のギター、重量感のサポートに徹するベースとリズム展開やボーカルとの掛け合いなどトータルで見るとギター並に目立ちまくりのドラム。
全パートがそれぞれにカッコいいのに、それが組み合わさったときの破壊力ときたらもうね。特に#6"Deflesh The Abducted"の中盤の、楽器陣が同期してドッスンドッスン言わせてるところとか。ダイナミックすぎるドラムの動きとか。最高ですね。
速さと遅さの落差の演出に、ブラストビートやビートダウンなどに混じって普通の8ビートなんかもあって、遊び心も感じさせてくれます。それが嫌味でないってのが凄い。
メタルの中でも随一の自家中毒感を誇るデスメタルというジャンルですが、聴きやすさと暴虐性を兼ね備えた、トータルで完成度の高いアルバムが09年に出ているので、まだまだ先細ることはないでしょう。
ただ、「スネアの音がDEVOURMENTじゃない!イヤだ!」って人は多かれ少なかれいると思うんで、2ndに失望した人は聴かない方がいいかもしれませんね。そういう人は音楽的にあんまり共通点ないけどスウェーデンのDEVOURMENTの方を聴(ry
【89点】
2013年2月23日土曜日
NODRAMA: "The Patient" (2012)
エットレ・リゴッティといえば、DISARMONIA MUNDIのリーダーであり、ジブリのメタルカバーコンピレーションを世に送り出したなどの印象が強いですが、実は彼はCoroner Recordsというレーベルも主催しております。
そのCoroner Recordsから去年デビューしたスペインの「モダン・メタル」を標ぼうする新人バンドがこのNODRAMAです。
これが、さすがはエットレが目をつけたバンドというか、今までありそうであんまりなかった感じの音を出してるんですよね。
某所ではゴシック・メタルとカテゴライズされていましたが全然違います。端的に説明すると、グロウルを使わないモダンなメロディック・デスメタルという感じです。マイルドなメタルコアとも言えそうですね。
かといってBULLET FOR MY VALENTINEみたいなのとは違うんだよな~。みんなその辺思い出しそうだけど、そうじゃないんだよなあ~。
…一言で言い表すなら、オルタナティブ・メタルと言った方がしっくりくるかも、と思うあたり、オルタナティブって単語は偉大だな。あれやんな。
ギターリフはエスニックなツインリードをしてみたりと変わり種っぽさも見せつつ、基本的にはモダンメロデスでは定番的なものですね。
Voはエモっぽさと90年代オルタナティブ・メタルっぽさの同居しているような声質で、雰囲気としてはSOILWORKやMNEMICのVoに近いですね。スピード感のある曲では力強く響いて、ミドルテンポの曲では豊かに歌い上げることができます。
というか、音的にもそのMNEMICのVoがやってるONE WAY MIRRORというプロジェクトにかなり近いなあ。
ガツガツ疾走する#2"Tail Nailed Fish"、全体的にポストハードコアくさいオルタナティブ・メタル・ナンバーの#5"Power Of Lavishness"、IN FLAMESの"Trigger"をよりメランコリックにしたような#10"Believer"など、なかなか聴きごたえのある曲が多いですね。
ちょいとボーカルの出来が曲によって違うかな? と感じるので、次のアルバムでの改善に期待してます。
【81点】
2013年2月22日金曜日
CRYPTIC SLAUGHTER: "Money Talks" (1987)
スラッシュメタルは、こんな物好きのブログをご覧になるみなさんならご存知かと思いますが、ハードコア・パンクとの共通項や相互作用の多いジャンルです。
SLAYERなんかはずっとハードコア・パンクの影響受けてますしね。
中でもこのCRYPTIC SLAUGHTERは、その名もずばりクロースオーバー・スラッシュと呼ばれるサブジャンルに属しており、ハードコア・パンクの影響を隠すことなく、むしろ表に出しまくっています。
CRYPTIC SLAUGHTERは生粋のスラッシュメタルほど刻みが激しかったりテクニカルなのではなく、"Punks Not Dead"のころのTHE EXPLOITEDを思わせるパンキッシュなリフをスラッシーな音作りにして音数を微妙に増やしたり減らしたりしたようなものが多いですね。
そして、ときにグラインドコアに通じる強烈な速さを見せます。というか速くなるときは大体ブラストビート使ってます。
80年代後半のブラストビート使ってたアルバムというと、TERRORIZERの"World Downfall"がよく挙げられますが、あっちは89年作なのでこっちの方が早いという。
お世辞にもA級のバンドではないのでドラムが不安定なことが多いですが、それですら「ハードコアなんだからいいっしょ!?」的なノリによって良い感じになってしまっているのが恐ろしいですね。
まあ、プロダクションもこの手のバンドにしてはまともな方だし、聴けないほどのド下手でもないので、そこら辺の超絶ポンコツスラッシュといっしょにしては失礼ですが。
気になった曲を挙げると、まずはストップ&ゴーを超極端に演奏した#3"Could Be Worse"。グラインドコアバンドがスラッシュメタルやったらっていう雰囲気です。
それから、S.O.D.に通じるバカさ加減のある#7"Too Much, Too Little"、ぐちゃーっと潰れていくブラストビートからのノリノリなコーラスっていうのが何ともアホっぽくて面白い(褒め言葉です)#8"Human Contrast"。
そして、#9"Tables Are Turned"でしょうね。突進力ありまくりの展開は思わずサークルピットで回ったりぶつかりモッシュしたりする気分にさせられます。何よりそんな曲に「ちゃぶ台返し」っていう曲名つけちゃうのが良い。
すでにLAメタル爛熟期で、TERRORIZERも登場する前。タイミングさえよければ有名になったんじゃないでしょうかね?
ちなみに今は活動休止期間と再結成を経て、バンド名をBELOWに変えているそうですがまったく情報がないです。誰か教えてくり~。
【82点】
2013年2月21日木曜日
WHITECHAPEL: "A New Era Of Corruption"
デスコアと言えば?と訊くとかなりの確率で名前が挙がるのは先日Voの亡くなったSUICIDE SILENCEやBRING ME THE HORIZONでしょう。そして俺が一番好きなデスコアのバンドはIMPENDING DOOMです。
なのにデスコアのアルバムについて書くのは、このWHITECHAPELが最初っていうね。
WHITECHAPELはデスコアの中では一般的な音楽性のバンドです。
ややこもり気味のガテラルボイス中心のVoが、でろんでろんのへヴィネス全開リフに半音階リードギターやKORNみたいな不協和音といっしょに乗っかり、それをブラストビートや手数を抑えたブレイクダウン風ドラムで下支えする、という感じですね。
演奏は非常にテクニカルで、機械のような緻密さがあります。ジャケのメカニカルな仏像はイメージとしてはぴったりですね。
ミックスもしっかりしていて、へヴィネスを的確に伝えています。
MVにもなった#3"The Darkest Day Of Man"やDEFTONESのチノ・モレノ(Vo)の参加した"Reprogrammed To Hate"の重苦しさは、心地良すぎて鼻血出るレベル。
このバンドが普通のデスコアのバンドと違うのは、ギターが三人いることです。ぶっちゃけ三人いてもCDの音にはぜんぜん影響しないんですが、ライブでの音圧は動画とかを見る限りツインギターよりもはるかに良いですね。
メタルコアからデスコアに流れてきた人にとってはちょいデスメタル色が強すぎるようですが、デスメタルから流れてきた俺みたいなのにとっては、「デスメタルがさらにモダンになったみたいな音でカッコいい!」という感想になります。
ただ、ボーカルにしろギターリフにしろ、かなり低音域にとどまり続けるので、アルバム通しての変化はかなり少ないです。通して聴くのはちょっと厳しいですね。曲単位で聴くと普通にカッコいいのですが。
【84点】
2013年2月19日火曜日
WHIPLASH: "Power And Pain" (1985)
スラッシュメタルというのは、ブラックメタルの直接的な始祖であると同時に、メロディック・スピードメタルやメロディック・デスメタルの間接的な始祖でもあります。
なので、それらのリスナーにはスラッシュメタルのリスナーの「ある価値観」が受け継がれております。それは一般の音楽ユーザからすると理解し難いものなのですが、その手のジャンルが好きな人はみな多かれ少なかれ同意するでしょう。
それは、
ポ ン コ ツ ほ ど 良 い !
という価値観です。俗にいうB専みたいなもんですね。スラッシュメタルにはそういうリスナーが特に多い気がします。
このWHIPLASHの1stアルバム、"Power And Pain"もそんなB級スラッシュ専門(すいません、他意はないです)なメタラーから絶大な支持を受ける一枚です。
何がどうB級かというとですね、まず、ジャケがダサい。どういう効果を狙ったのかまったく分からない。さすがに擁護しきれないダサさ。
曲そのものもジャケに負けないぐらいダサいです。ジャケ同様低予算丸出しのしょぼいプロダクションな上に、ドタバタ感溢れるドラムの2ビート、とりあえず叫んでみました的なボーカル、16分刻んで時々ピロリロしてればいいと思ってるようなもたりまくり&走りまくりのギター、聴こえないベース。
ていうか一曲目から曲名が"Stage Dive"な時点でアホ全開です。「警備員どもを押しのけろ!」とか「殺すためにスラッシュするんだ!」とか歌ってるし。
極め付けは#6"Power Thrashing Death"。曲名といいリフといい歌詞といい、バカ丸出しにもほどがあります。
しかし、しかしですよ。これが何故かカッコよく聴こえるんです! バンド名のとおり初期のMETALLICAに影響を受けているなあとか、実はギターリフにテクニカルな部分もかなりあるなあとか、聴きどころもかなり多いんですよ!
実際、下手くそなりに耳にとっかかりを残すのは、上手いけど全然印象に残らない曲作るのなんかよりよっぽど大変ですし。
というわけで俺はB級スラッシュは別に至高のジャンルだとは思いませんが、このアルバムは嫌いになれません。というかこのダメさ加減を愛してます。
2013年2月18日月曜日
FIVE FINGER DEATH PUNCH: "The Way Of The Fist" (2007)
いやー懐かしいですね5FDP。
某サイトの影響で完全にメロスパーと化していた俺を、一気にモダンなメタルの方面に引き戻しやがったバンドですよ。すごくどうでもいいですね。
何が耳を惹いたのか。
やはり、メロスパーの琴線にも触れる欧風のメロディックなリード・ギターやアルペジオと、ニューメタル特有のダウンチューニングでグルーヴを重視するリフの合わせ技でしょうね。
類型の音をメタルコアという形で聴く今となっては別に珍しくもなんともないけれども、メタルにハマって日の浅い小僧にとっては非常に刺激的かつ魅力的でした。
ゾルタン・バソリ(Gt)はそもそもハンガリー出身なので欧風のリードギターを弾いてても別に不思議ではないのですが、当時の俺にそんなことは分からんので、「アメリカにもこんな風に弾くギタリストがいたんだ!」とか思ってました。
無知ってそれだけで曲の魅力を数段押し上げるんですね。
さらに言えば、元々コリィ・テイラーやロブ・フリンを始めとするニューメタルボーカリストたちの「デス声」を崇拝していた俺にとっては、ハードコアなシャウトに加えて野太いクリーンを操るVoのアイヴァン・ムーディは神にすら思えたわけです。
ていうか、今聴いても普通にアイヴァン・ムーディはカッコよくね?って思いますし。いや、KsEのハワード・ジョーンズの方が好きだけどさ。
#1"Ashes"、#2"The Way Of The Fist"、#3"Salvation"、#4"The Bleeding"、#6"The Devil's Own"、#7"White Knuckles"、#8"Never Enough"、#10"Can't Heal You"などなど、ドヤ顔でカッコいいだろ?とばかりに分かりやすいメロディとリフでごり押ししてくる曲の素晴らしいこと。
そのリードギターやドラミング、ボーカリゼーションにあざとさを感じないかと言えば嘘になりますが、オルタナティブ・メタルで重要なのは何よりも分かりやすさ。
そして、何となく定型に当てはまってること。
最近はチャラさやあざとさのあるメタルに抵抗があったにも関わらず、5FDPは改めて聴いたら未だにかっこよかった。
「お約束」的な要素を、単なる才能の貧困さとして片づけてしまうのはあまりにもったいない。「あざとい」バンドをチャラいセルアウト野郎としてレッテルを貼るのはもっともったいない。
なんて思わせてくれたりしました。反省。
最近は日本ではそこまで注目されてないようですが、近作もちゃんと買っておきたいなあ。
【89点】
2013年2月17日日曜日
BLOOD DRUNK: "Machine Made Flesh" (2010)
このチルボドの6thみたいなバンド名のBLOOD DRUNKは、メタルとパンク発祥の地であるイギリス出身のデスメタル/グラインドコアバンド。
"Machine Made Flesh"は1stアルバムで、bandcampから公式に無料ダウンロードできる音源です。CDも輸出しているようなので、現物厨にも嬉しいですね。
デスメタルとグラインドコアを混ぜたようなバンドをデスグラインドというジャンル名でカテゴライズします。定義も適当ならジャンル名も適当、適当過ぎて正直よく分かりません。一番有名なのはEXHUMEDですかね。
このBLOOD DRUNKは、bandcampでdeathgrindタグを漁ってて見つけました。
デスグラインドを標榜するわりにかなりブルデス色が強く、NILEあたりを思わせるリフやテンポチェンジを多用する場面なんかが結構出てきます。こもり気味のグロウルとブラックメタル的なギャオギャオ声を上手いこと使い分けてるボーカルがブルデス感を助長してます。
スネアの音もスコココココ…というよりポコココココ…的な感じで聴こえますし、何より曲に整合性がありまくりなので、グラインドコアっぽさはかなり少なめです。ちょいちょい挟むSEがグラインドコアっぽいんですが。
微妙にへっぽこなプロダクションと、ときどき出てくるMORBID ANGELみたいなトレモロリフがオールドスクールっぽさも申し訳程度に出しており、いいアクセントになってますね。
曲単位でいうと、#5"King Abomination"なんかはブルデスとしてなかなか良い曲ですよ。ブルデス好きが身を乗り出すようなリフをいくつも組み合わせてて、結構な回数リピートしました。
曲名からグラインドコア要素を期待して聴いたら思いっきりNILEあたりのブルデスな感じでずっこけて、逆にそれで印象に残った#7"Grinder"とかも、よく聴いてみると地味に良いです。
ただ、"King Abomination"も"Grinder"も含めて、全体的に地味。とてつもなく地味。新鮮味や意外性や独創性はほぼ無し。なのでデスメタルにオリジナリティを求める向きには不向きでしょうね。
俺にとっては地味デスメタルis正義なので無問題ですが。通して聴いても30分しないので聴きやすいというのもポイント高めです。なので、それほど頻繁に聴くわけではないですが、結構好きですね~。
あるか分からない次作に勝手に期待してます。
【81点】
UNGRACE: "Hostile Revival"(2010)
ウクライナのインダストリアル要素のあるモダンなデスメタルバンド、UNGRACEの1st。
以前はdfmo.netというキリル文字圏のバンドを集めたレーベルのサイトで無料でダウンロードできたのですが、サイトがどうも閉鎖してしまったらしく、現在は現物をバンドから買う必要があるようです。俺はdfmo.netがまだ生きているときにダウンロードできました。
如何にもオシャレさを狙った感のあるロゴとモダンなアートワークですね~。
音の方もデスメタルを標榜するくせしてなかなかに要領よくまとまめられています。FEAR FACTORY的なリフとバスドラの同期、ちょいちょい顔を出すキーボード、綺麗に歪んで聴き取りやすい低音グロウル、ピロリロしたギターソロ。
なんちゅーか、ブルデス/テクデスに似た瞬間もかなり多いです。
モダンなメタルを意識したと思われる、クリーンのサビやポストハードコア系のリフを多分に含んだ曲もございます。できるだけ間口を広げたい、という感情が垣間見えますね。
ただ、それが必ずしも魅力的に映るかというとそうでもないです。
ノリノリ感のようなものをうまく出してる#2"Humanity Dethroned"や、デスメタル色を強く出した#3"Insane & Paranoid"、#5"It's Hostile"なんかはわりかし良くね? とか思ってるのですが、いかんせん他の曲は聴いててもあまりピンとこない。
主にインダストリアル/モダン要素とデスメタル要素がうまいことリンクしないのです。キーボードが本当に必要か?と思う瞬間も結構ありますね。
音楽に貴賤はないとは言いますが、作曲や演奏における上手い下手というのは残念ながら存在しており、UNGRACEは残念ながら作曲面ではまだパーフェクトではないのでしょう。
今でもたまにランダム再生で上に挙げた曲がかかるとふと思い出して、アルバム前半だけ聴いたりしてます。
【77点】
MINISTRY: "Psalm 69" (1992)
インダストリアル・メタルの確立者、MINISTRYのディスコグラフィの中でも、最高の一枚といっていいアルバムがこの5th。
インダストリアル・メタルとは何ぞや。
日本人にはなじみの薄いジャンルですが、サンプリングやドラム打ち込み、シンセサイザーの多用で曲を彩ると特徴づけられています。
00年代にはLINKIN PARKやSLIPKNOTによりロックの世界では一般的になった要素ですね。
ちなみにインダストリアル・メタルというとアメリカのバンドが圧倒的に多いですが、これはインダストリアルというジャンルが発展するにあたって、ロックやメタルの要素を取り入れて大衆化していったアメリカのインダストリアル・バンド/アーティストを、「インダストリアル・ロック」とか「インダストリアル・メタル」と区別していったためだそうで。
元々MINISTRYもEBMのユニットとしてスタートしており、一旦EBMとしての評価を確立した後、メタルに傾倒していったということで、見事にジャンルの歴史を体現しております。
まあ後追いで聴いてる俺にとっては関係ないことなんですがね。
EBMとかが好きなインダストリアル・メタルのファンの中には、5thはスラッシュ色強すぎてダメとか、3rdや4thの方がEBM色あるとか機械的だとか何とか言う人がいますが…
スラッシュ色があるから良いんだよ!
#1"N.W.O."のBPM固定で冷徹に進んでるところとか!
#3"TV II"のグラインドコアぎりぎりのドラムマシーンの暴れっぷりとか!
#4"Hero"のベイエリア・スラッシュっぽいリフや掛け声の入れ方とか!
どう聴いてもカッコいいとしか思えません。スラッシュ脳乙。
あと、必ずしもスラッシュメタル系のアプローチばっかしてるわけじゃないんですよね。#2"Just One Fix"とかハードロックっぽい盛り上げ方ですし、#8"Corrosion"とかいかにもアメリカのノリノリなインダストリアル・メタル・ナンバーですし。
ジャンル特有のサウンド・プロダクションやサンプリング手法に戸惑う人はいるでしょうが、ぜひ一度聴いてみてください。とめどなく溢れる殺気にハマりますよ。
【89点】
2013年2月16日土曜日
HATEBREED: "The Rise Of Brutality" (2003)
メタルコアとはそもそも「メタリック・ハードコア」なわけですよね、原義的には。
そのうちハードコアな性質、もっと言えばハードコア・パンクがスラッシュメタルに影響を与えたエッセンスを、メタルの要素で加工したバンド、それがHATEBREED。と俺は勝手に考えているわけですが。
メタルの要素は主に音作りとかで、ハードコアの要素はVoとモッシュパート、ブレイクダウン、リフですかね。リフについては両ジャンルともに共通項が多いので断定はできません。
新作が出ているのでそれについて書きたいのですが、金がなさすぎて今はまだ買えないので名盤のこれ(3rd)について書きます。
人によっては"I Will Be Heard"の入ってる"Perseverance"の方がいいって人もいるみたいですが、全体的な印象はこっちの方が圧倒的に良いですね~。
どうでもいいけどメタルコアのバンドってATRとか、AILDとか、KsEも、全部名盤は3rdに集中してますな。
このアルバムの何が魅力的かというと、重く叩きつけるようなリフと、男臭いシンガロングと、ダイナミックなドラムの破壊力。
特に#2"Straight To Your Face"、#3"Facing What Consumes You"とどんどんスピードアップしていってからの#4"Live For This"。この抜群のタイミングでミドルテンポの曲を持ってくるセンス。素晴らしいですね。
曲単位で聴くと正直大したことやってないんですが、曲のつながり方に燃えます。
アルバム後半になるとへヴィネス重視の曲が増えて前半の疾走感はなくなるんですが、ジェイミー・ジャスタ(Vo)の暑苦しいシャウトがその分映えてきます。特に#8"Beholder Of Justice"とか、#10"Voice Of Contention"とかですね。
あとアルバム最後を飾る#12"Confide In No One"は名曲。ブレイクダウンかっこよすぎ。
歌詞も読みこむと気分が高揚するものが多いので、歌詞厨のあなたもぜひブックレットを見て燃え上がりましょう。
とか色々書いてきましたが、ハードコアのアルバムは基本的に考えずに聴いてた方が幸せになれます。コピバンやるために聴きこんでたときは結構しんどかったです。
熱血体育会系の音を聴いて元気出したいときにどうぞ。
【92点】
ALL THAT REMAINS: "Behind Silence And Solitude" (2002)
当時SHADOWS FALLのVoをやっていたフィリップ・ラボンテのプロジェクト的な感じで始まったバンド、ALL THAT REMAINS。
3rdが(特に"This Calling"が)圧倒的に有名すぎてもう他のアルバム聴かれてないんじゃないかって感じですが。特にこの1st。
メタルコアはアメリカのメタルヘッド/ハードコア・キッズによるAT THE GATESの「発見」から始まったジャンルなわけですが、そのことを強く意識させられるアルバムですね。
ダウンチューニングの施されたリフはATGやその周辺のスウェディッシュ・デスメタルちっくで、ブレイクダウンを時折入れてくるところはハードコアな感じ。
ちょいとドラムがバタ臭い感じとかもATGっぽいです。スラッシュよりはハードコア寄りの2ビートを中心に叩いてたり、上半身がもたってたり、といった要素がバタ臭さにつながってる模様。
後に数々のメタルコア・アンセムの感動的な歌メロを多数生み出すフィリップ・ラボンテは、がなりっぱなしでクリーンは一切吐き出しません。勿体ない。
このアルバムもメタルコアのアルバムとしてカウントされてるわけですが、ブレイクダウンがそこまで出てこないってことを考えると、やはりリフによって特徴づけられてるジャンルなんだなあと。
ただ、後々顕著になるバスドラと同期した刻みは出てこないです。
気になった曲をいくつか挙げると、#3"Follow"は最後のブレイクダウンでソロ入れてくるところがニクい。#6"Shading"はやや変拍子とかも取り入れたメロデス曲でツインリードがなかなか良いっす。
めちゃくちゃ速い曲とかはないしはっとするような瞬間も少ないんで、ATRのアルバムなら何でも聴けます!てなファン向けですな。それでもあんまり頻繁に聴くことはないでしょう。
【73点】
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